江の島の植物・シャガシャガは常緑多年草で、山地のやや湿った場所などに群落を形成します。江の島では中津宮広場の山側の一角で見られます。
江の島の植物・シャガ(射干・著莪)
2019年3月11日 写真&文: 坪倉 兌雄
シャガ(Iris japonica)はアヤメ科アヤメ属の常緑多年草で、種小名はjaponica(日本)になっていますが、原産は中国で、古くに日本へ入ってきて野生化し、本州、四国、九州の各地に分布したものと考えられています。アヤメ科の植物のなかではシャガだけが常緑で、根茎は走出枝を出して増え、山地のやや湿った場所や斜面などに群落を形成します。江の島では中津宮広場の山側の一角で見られます。葉は表面が折り合わさった単面葉で長さ30~60㌢、幅2~3.5㌢の剣状、やや肉質で光沢があります。花は4~5月に咲く一日花で、葉の間から30~60㌢の花茎をだし上部で枝を分け径5~6㌢の白紫色の花を数個つけます。6枚の花弁のうち外側の3枚が外花被片で、細鋸歯がめだち紫と黄色の美しい紋様があり、内側の内花被片3枚には紋様はなく白色で先端が浅く2裂します。
花の中央には子房からのびて花弁状に3分枝した花柱枝があり、その先端は2裂してさらに細かく裂け、柱頭は花柱枝の上部につきます。雄しべは花柱枝の裏側に1本あります。日本に分布するシャガは3倍体なので種子はなく、根茎で増えていきます。植物の葉はふつう平たくて表側と裏側がはっきりとした「両面葉」ですが、シャガは葉の表面が折り合わさってできた「単面葉」で、どちらかに傾いた状態で生育します。日光のあたる面は緑色で光沢があり、その裏側になる面は黄緑色を呈し、本来表面とされる包み込まれた葉の内側はやや白みをおびています。シャガの属名はギリシャ語のiris(虹)に由来し、種名のjaponicaは日本で、わが国に自生することを意味しますが、古くに中国から渡来したものと考えられており、和名はヒオウギの漢名「射干」からとったものとされています。
2019年3月11日