江の島の植物マテバシイ
江の島では北緑地などで見ることができます
江の島では北緑地などで見ることができます
江の島の植物・マテバシイ
2021年7月25日 写真&文: 坪倉 兌雄
マテバシイ(全手葉椎・馬刀葉椎)Lithocarpus edulisはブナ科マテバシイ属の常緑高木で雌雄同株、本州、四国、九州、沖縄の沿海地に生える日本固有種で、樹高は10~15㍍になり、公園樹や街路樹としてよく栽培されてきました。江の島では北緑地などで見ることができます。樹皮は暗灰褐色でなめらか、縦に筋が入ります。葉は互生して螺旋状につき、枝先に多く集まります。葉は全縁で厚い革質、光沢があり裏面は淡緑色に、側脈は10~13対、倒卵状楕円形で先端は短くとがり、基部はくさび形、長さ5~20㌢、幅3~8㌢で葉柄の長さは1~2㌢に。托葉の長さは約5㍉で線形、葉が開くと間もなく落ちます。花期は5~6月、新枝の葉腋から長さ5~9㌢の尾状花序をつけます。雄花序につく苞は褐色で長さは約1㍉、花被は皿状で6裂に、雄しべは12本、花糸の長さは約4㍉で花被の外にでます。
雌花序には雌花が2~3個つき、その先に雄花がつくことが多くあります。雌花は総苞に包まれて直径約1㌢の球形に、花らしくない花で蜜も出しません。しかし花は独特の臭いを放ち、蜂などをよびます。雌花はさらに成長して2年目に果実になりますが、発育不良の果実は途中で脱落します。果実は堅果で、長さ2~3㌢の長楕円形、翌年の秋に茶褐色に熟し、その下部は椀状の殻斗に覆われますが、この殻斗は苞葉が融合して椀状になったものです。果実は食用になります。名前の由来は、国語辞典「大言海(だいげんかい)」に、「全手葉椎(マテバシイ)」とあり、枝先に多くの葉が互生する姿を、手の平を開いた様に見立てたものとされています。また、葉がマテガイ(馬刀貝)に似ることからマテバシイ、などの説もあります。マテバシイは防風・防火・街路樹に、都市の緑化樹としてもよく植栽されており、材は築材・器具材などにも用いられます。
2021年7月25日