江の島の植物・ホウライシダ
江の島では参道わきや神社境内、住宅の石垣や排水路わきなどで、普通に見ることができます
江の島では参道わきや神社境内、住宅の石垣や排水路わきなどで、普通に見ることができます
江の島の植物・ホウライシダ
2022年04月20日 写真&文:坪倉 兌雄
ホウライシダ(蓬莱蔓羊歯)Adiantum capillus-venerisはイノモトソウ科ホウライシダ属の常緑羊歯で、わが国では本州の千葉県以南から、四国、九州、沖縄に分布し、暖地の海岸近くの岩や石垣、などでその生育が見られます。江の島では参道わきや神社境内、住宅の石垣や排水路わきなどで、普通に見ることができます。根茎は短く匍匐し、生育場所によって葉の大きさはそれぞれ異なります。岩や石垣に生える長さ約10㌢の小形のものから、直射日光のあたらない、やや明るい参道わきの湿地斜面では、葉柄の長さが36㌢、その上部の葉身の長さは27㌢、合わせて63㌢の長さに及ぶものがあります。葉身は三角状の長楕円形で下垂して繁り、葉質は薄くて緑色、2回羽状複葉で小葉片は扇形、上部に不規則な切れ込みがあり、葉柄や中軸は黒褐色で艶があります。
胞子嚢群は円形で小羽片に1個つき、その葉縁は裏側に折れて膜状になり白っぽく見えます。和名は台湾の蓬莱山に多く見られることから、蓬莱を冠して名付けられたとされています。同じアジアンタム(Adiantum)の仲間に、崖地などに生えるハコネシダがあり、本州南部から九州に分布します。草姿がホウライシダに似ていますが、葉は三角状で基部はくさび形、3回羽状複葉で葉の上部には不規則な鋸歯があります。胞子嚢群は円形で葉の裂片に1個つき、その部分の葉縁は裏返り、胞子嚢を包みます。これらが見分け方の要点になります。国内に自生するホウライシダの仲間にはハコネシダの他に、クジャクシダ、アジアンタム(園芸種)などがあり、いずれも葉は細くて柔らかく、その優美なさまが涼しい雰囲気をつくりだし、疲れた心を癒してくれます。これらは観葉植物としての人気が高く、鉢植えなどにもされていますが、ハコネシダの栽培は難しいとされています。参考文献:シダ植物、全国農村教育協会。
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 2022年04月20日