江の島の植物・ホウライカズラ
江の島では海側の常緑樹林内で見ることができます。
江の島では海側の常緑樹林内で見ることができます。
江の島の植物・ホウライカズラ
2022年07月10日 写真&文:坪倉 兌雄
ホウライカズラ(蓬莱蔓)Gardneria nutansはマチン科ホウライカズラ属の常緑つる性の木本で、本州(房総半島)以西、四国、九州、沖縄に分布する日本固有種とされています。江の島では海側の常緑樹林内で見ることができます。根は地を這い、基部は木質化して褐色を呈し、その上部で枝分かれした枝は緑色で無毛、他の植物などにからみながらのびます。葉は単葉で対生し、葉柄の長さ0.5~1.5㌢、葉身は長さ5~12㌢、幅は2~6㌢の卵形または卵状楕円形で、表面は緑色で光沢があり、縁はやや波打ち、先端は尖り、基部はくさび形。葉の裏面は淡緑色で、中央脈がやや隆起します。花期は6~7月、本年枝の葉腋から花柄をだし、直径約1.5㌢の白い花を1個~2個下垂します。日のあたらない暗い樹林内にひっそりと咲く珍しい花です。
花冠は5深裂して裂片は反り返ります。雄しべは淡紅色で5本あり、花糸は短く、葯が花柱を取り囲みます。果実は球形の液果で径1~1.5㌢の球形、11~12月に赤く熟します。江の島でホウライカズラの観察をはじめてから20年以上になりますが、残念ながら花を見ることはできませんでした。今日(令和4年7月1日)は片瀬海岸の海開き、早朝に植物観察に江の島を訪れ、海側の樹林内にひっそりと咲くホウライカズラの花を手に取って見ることができました。江の島に咲くホウライカズラの花、花の命は短く、2日目には黄ばんでしまいます。長年の思いが叶って嬉しかったですね。名前の由来は、人目の届かないような場所に生え、利用価値もわからない珍しいつる性の植物であることから、中国の伝説に登場する霊山「蓬莱山」の名を冠して、蓬莱蔓(ホウライカズラ)になったとされています。蓬莱山は、中国の史記(秦始皇帝本紀)にある三神山の一つで、東海中にあり、仙人が住む不老不死の地とされる霊山とされています。
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 2022年07月10日