江の島の植物・ヒイラギナンテン
2023年06月20日 写真&文:坪倉 兌雄
ヒイラギナンテン(柊南天)Berberis japonicaは常緑広葉樹の低木、別名でトウナンテン(唐南天)とも呼ばれています。原産は台湾・中国・ヒマラヤとされ、江戸前期の天和~貞享年間に渡来し、公園樹や庭木としてよく植えられてきました。江の島では、サムエル・コッキング苑、亀ヶ岡広場、江島神社(奥津宮の境内)などで見ることができます。幹は株立ちで樹高は1~3㍍に、樹皮は淡褐色のコルク質で細い割れ目があります。葉は厚い革質で光沢があり、奇数羽状複葉で、茎の先に集まって互生し、その基部はさや状になって茎を抱きます。葉の長さは30~40㌢、小葉は5~9対あり、長さは約8㌢の常緑で卵状楕円形、裏面は黄緑色、縁にとげ状の粗い鋸歯があり、その先端は針状に尖ります。頂小葉以外の小葉には葉柄がありません。
葉裏は黄緑色
秋に紅葉色の葉が見られる
花弁は6個で直立する
花期は3~4月、茎の先に長さ10~15㌢の総状花序が垂れ下がってつき、小さな黄色い花が多数開きます。花弁は6個で直立して、その先端は2裂に、雄しべは6個、雌しべ1個あります。花弁の周囲を囲むように、花弁状で大小形が異なる9個の萼片がつき、色は花弁と同じ黄色になります。果実は液果で球形~楕円形、6~7月に粉白を帯びた黒紫色に熟します。ヒイラギナンテンの材には薬用成分「ベルベリン」を含み、民間療法ではこれを煎じて飲むと、扁桃腺や口内炎などに効果があるとされています。ヒイラギナンテンは耐寒性や耐暑性にすぐれ、常緑の低木で、しかも手入れがしやすいことから、庭木や垣根に、公園樹、花材などにもよく用いられます。名前の由来は「ヒイラギ(柊)に似た刺のある葉があり、実の付きかたがナンテン(南天)に似ることに由来する」とされています。ちなみにナンテン(Nandina domestica)は、メギ科ナンテン属の常緑低木で、1属1種の植物です。
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