湘南の野鳥②
2023年9月1日 (ITAZU)
藤沢および周辺で見かける野鳥たち約40種を、その特徴別に2回に分けて紹介します。今回は、②回目で、下表右(赤枠)の、[渡鳥]から[故事など話題性のある鳥]まで。 ① 回目の記事は⇒こちら
「鳴かずに口をつぐむ」 ツグミ
毎年、9~10月ごろシベリアのほうから日本に冬鳥として渡来し、3~5月ころ帰ります。冬枯れの農耕地や公園の芝生などで地面を掘り起こして、ミミズ、昆虫など食べる、雀の倍くらいの大きさの茶色系の鳥で、よく見かけるなじみの鳥です。
日本にいる冬の間は、非繁殖期で,鳴かずに口をつぐんでいることから「ツグム」の和名になったといわれます。
開(ひら)けた地上で餌を捕食するので、4-5歩歩いて、胸をそらし、天敵の猛禽類かを警戒する動作を繰り返します。ぴょんぴょん跳ねるように歩くので、「跳馬」という呼び名もあります。
かつては珍味、美味として珍重され、1970年代まで、密猟が行われ、カスミ網を張る「トヤ場」(密猟場)があり料理を出す番小屋がありました。
「飛翔する昆虫などを空中捕食」 ツバメ
毎年3~4月に渡ってきて人家の軒先などに巣を作ります。繁殖期はつがいで行動しますが繁殖が終わると、アシ原に集団ねぐらを作ります。巣を人家などに造るのは、天敵のカラスが近寄りにくいとからだといわれます。巣内で育てる期間は3週間くらい。巣立ち率は50%程度で、2回繁殖するのが多いといわれます。10月ころに帰りますが、一部越冬するものもあります。
餌は、飛翔する昆虫などを空中捕食し、水面上を飛行しながら水を飲みます。
さえずりは「チュピチュピジリリチビー」などと聞こえ「虫食って土食って渋ーい」と聞きなしました。土で巣を作る特徴をとらえた聞きなしです。
「♂はオレンジ色」 ジョウビタキ
ジョウビタキは、日本には越冬のためにやってくるため冬鳥に分類宇されます。可憐な小鳥(雀くらいの大きさ)です。
雄と雌は羽の色が異なり、雄は銀色の頭とオレンジ色の下面が美しく、雌も少し地味ですが薄いオレンジ色がやはり美しい。
雄の頭が白っぽいので、男性の老人の能面「翁(おきな)」を意味する「尉(じょう)」という字がつけられたといわれます。
また羽に白班画あるので紋付鳥ともいわれます。ジョウビタキは、「ヒッヒッ」と鳴きますがこの鳴き声が、火打石の音に似ていることから「火焚(ひた)き」といわれるようになったようです。
「白いアイリング」 メジロ
メジロは、皆さんご存知の目の周りが白く、羽がウグイス色なので、「梅にウグイス」の絵は、メジロと混同されることもあります。
漢字では「目白」。英語でもWhite-eyeと書きますが
「繍眼児(しゅうがんじ)」ともいわれます。
眼の周囲に白い絹糸のような質感の羽毛が生えていて刺繍をしたように見えることからこの名があります。
メジロの他、イソシギ、ガビチョウも白色のアイリングがあります。
「黄色いアイリング」 コチドリ
文字通りチドリ(千鳥)の中で一番小さく、16cmくらいで河原や砂浜で見られます。
黄色いアイリングが特徴です。
千鳥足と呼ばれるジグザグとした移動と静止を織り交ぜて素早く獲物に詰め寄り捕食します。
夏鳥ですが、少数が暖地で越冬します。
万葉集などでも千鳥が詠まれて古くから日本人にはなじみの鳥です。チツチツとなくとも浜に多くのチドリが群れている様子から「千鳥」と呼ぶようになったともいわれます。
「青いアイリンング 」 サンコウチョウ
鳴き声が「月日星ホイホイホイ」と聞こえ月、日、星の三つの光の鳥「三光鳥」の名がつきました。暗い林に住み、フライングキャッチや低空飛翔で昆虫類をつかまえます。
アイリングには、メジロやコチドリのように瞼(まぶた)の外側の羽毛がリングになっているものと、サンコウチョウのように瞼(まぶた)の上下がつながって丸く見えるものがあります。
こうしたアイリングは何のためにあるのかについては、よくわかっていないのですが、森などの暗いところで仲間を互い認識しやすくするのに、役立っていると考えられます。
「田舎者集団 」 ムクドリ
ムクドリは椋鳥と書き、椋木の樹洞に巣を作るから名づけられたといわれます。しかし、生息環境の変化により都市に適応して大量に増殖するようになり、夕方に群れが集まって街路樹などに大きな集団ねぐらを作り市民を困らせています。また「ジェル」「チツ」「ギュ」「ギル」などとちょっと耳ざわりな鳴き方で音量が大きく、糞や騒音被害で社会問題化しています。
俳人、一茶に「椋鳥と人に呼ばれる寒さかな」という俳句があります。田舎から江戸に出稼ぎに出てくる田舎者集団という意味で「椋鳥」とよんで揶揄されていたそうです。
「日本準固有種 」 ヒヨドリ
ヒヨドリは、もっとも身近にみられる野鳥です。「ピイーヨ、ピイーヨ」と甲高い鳴き声が、ヒヨドリの和名の由来です。
頬が赤く頭がぼさぼさで、春は、桜の蜜を吸って花粉をくちばしにつけて、受粉の仲介役を果たします。秋冬は、木の実など食べ、千両や万両など庭の実を食べによくやってきます
繁殖期以外は群れで生活し、秋の渡りの時には、大群になります。藤沢でも近くの餌場を求めて、江ノ島島内と片瀬の陸地の間を群れで移動しています。
ヒヨドリは、日本列島や朝鮮半島など東アジアのきわめて限られた地域にしか生息しない日本準固有種で、欧米のバードウオッチャーには珍しい存在だそうです。
「嘴が円錐形」 カワラヒワ
オリーブ色の頭、黒と黄色の羽をした雀くらいの鳥で、河原や田んぼの近くで見かけます。雀より少し細めで嘴が円錐形をしています。
向日葵、菜種など油分のある種を好み、稲穂なども食べ、雀と食性が似ているようです。
嘴が円錐形なのは、大きい種を割って食べるのに適しているからです。
地鳴きは「キリリ、コロロ」、メジロのように可愛い鳴き方をします。さえずりは「ジューイン」と鳴くところが耳に残ります。
「日本の国鳥 」 キジ
キジは、雄の羽が美しく日本の固有種で、桃太郎などの昔話によって親しみやすい存在で、昭和22年に国を代表する鳥として、国鳥に定められました。オスの顔は、真っ赤で男性的で迫力があります。
またメスは、母性愛が強く、芭蕉の句に
「父母の しきりに恋し、雉子の声」
があるように、雉の親子の情愛が深いといわれてきました。
古くから貴族や武家の鷹狩りではキジが一番の獲物でした。
オスは繁殖期「ケーンケーン」と鳴きますが、「けんもほろろ」という言葉は、この「つっけんどん」な鳴き声に由来し、また、「頭隠して尻隠さず」のことわざも、草むらに隠れたつもりのキジの様子に由来しているとのことです。
現在では、あまり出会う機会がありませんが、昔から日本人には、親しまれた鳥だったことがわかります。
「日本書紀など神話にも記述がある」 セキレイ
鶺鴒(せきれい)は、英語ではWagtailというが、「尾を振る」鳥という意味である。
鶺鴒は古くから知られ、日本書紀など神話にも記述があり、尾羽を上下に振り、イザナギ、イザナミに夫婦和合の方法を指南する「嫁ぎ教え鳥」といわれています。日本の「国産み」の指南は鶺鴒から教わったことになります。
よくみかけるハクセキレイは
体長21cm。スズメより少し大きい。冬鳥だったのが、だんだん南下して年中どこでも見られる留鳥である。河原や農耕地、住宅街の草地などでよく見られ、人なつっこいところがあります。
「五位に任じられた鷺の王 」 ゴイサギ
河川、水田、沼などで見られます。大きさは60cmくらい。水辺で魚類、ザリガニ、カエルばどとらえて食べます。背の羽が、青みがたった灰黒色をしています。昼間は水辺の繁みで休み、夕方に採食を始める夜行性です。ゴイサギ(五位鷺)の幼鳥は「ホシゴイ」(写真下)と呼ばれ、敵から目立たないように斑模様になっています。
ゴイサギの漢字名は五位鷺です。五位は律令制の位階で、貴族や役人の官位の一つです。
この鳥の名前の由来には、平家物語でこんな逸話があります。
「醍醐天皇(897-930)の時、天皇が平安京の御所内の庭園に鷺を見て、従者に捕獲するよう命じましたが、鷺が逃げようとするので、「宣旨(天皇の命令)である」と叫んだところ鷺はひれ伏したので、捕まえることができました。天皇は、鷺を「神妙である」として五位に任じ、鷺の王であるという札をつけて放されたそうである。」
五位というのは、宮中に入ることが許される身分(殿上人)です。
背を丸めたゴイサギを見ていると、いかにも、神妙にしている姿が、さもありなんという気がしてきます。
なお、この鷺の逸話は、お能にもなっていて、演題は「鷺」です。
天皇の勅と言えば絶対で、風や雨など自然も従うと思われていた時代ですから、このように鳥の世界にも及んでいたかと思うと大変面白い逸話です
「黒いネクタイの模様がトレードマーク 」 シジュウガラ
胸に黒いネクタイの模様がトレードマークです。市街地でふつうにみられるメジロくらい(15センチ)の小鳥です。メスはネクタイ模様がやや細い。
春が近づくと、オスが「ツピーツピー」と繰り返し高い声でさえずるのをよく見かけます。
地鳴きは濁った声で「ジージージジジジ」といい、その声から「シジュウガラ」と名付けられたともいわれます。
シジュウガラは、雀が種子が主食に対して虫が主食で、しかも大量に食べるため、虫が増えすぎてしまうのを抑えているといわれます。
最近、NHKの「ダーウインがきた」という動物の番組で、シジュウガラの音声コミュニケーションが紹介され注目を集めました。彼らは、沢山の言葉を持っていて、その行動観察から鳴き声の意味が分かるそうです。
「気性の激しい」 モズ(百舌鳥)
百舌(モズ)の高音(たかね)とか百舌日和(モズびより)などといわれるように、秋になると木の頂や電柱に止まって「キイキイ キチキチ」と鋭い声で鳴いているのをよく見かけます。縄張り宣言です。20cm位の小鳥ですが、嘴は鋭い鉤状をし、獰猛で激しい気性をしています。
百舌(モズ)と書き、いろいろな鳥の鳴き真似をするという意味ですが、そこに「狡賢さ」を感ずるのでしょうか、「百舌勘定(モズかんじょう)」という慣用句があります。勘定のとき、人にばかり金を出させて自分は少しも出さないことをいいます。
この言葉は、「鳩と鴫(シギ)と百舌が集まって15文の買い食いをしたが、鳩に8文、鴫に7文出させて、百舌は1文も出さなかった」という昔話から来ています。
飛蝗(バッタ)やカエルなどの獲物を枝に刺して保存する「百舌の早贄(はやにえ)」の習性もあり、なかなかの用意周到の知恵者です。