続・湘南のお地蔵さま『浦島地蔵』
2023年10月10日 (江ノ電沿線新聞)
続・湘南のお地蔵さま(82)『浦島地蔵』
『浦島地蔵』横浜市 亀住町 中島淳一
京急「神奈川新町駅」で下車し、近くの公園を斜めに抜けると、石のお地蔵さまと出会う。浦島地蔵である。この辺りは江戸時代東海道五十三次の神奈川宿だったところで、海に近い港町だった。当時から浦島太郎伝説の舞台としても有名で、様々な史跡や「浦島丘」「亀久保」等の地名も残り、街路灯などにも「亀」が登場する。
舟形光背を付け右手に錫杖左手に宝珠を持ち蓮台に乗る。端正な顔立ちで衣文の彫りや流れも美しく、一流の石工により寛文三年(一六六三)に造像された。
明治の初めまでこの地に観福寿寺(浦島寺)という寺があり、乙姫が太郎に玉手箱と共に贈ったという亀に乗る観音像が祀られていたが、明治の大火で寺は焼失し像は近くの慶運寺に移され浦島寺の名前も引継がれた。浦島地蔵も観福寿寺近くに祀られていたが、廃寺となるに伴い慶運寺に牛車で運ぼうとしたがどうにも動かず、そのまま現在の地に祀られたという。
観福寿寺には太郎の両親の墓があったと伝わる。太郎は約三百年も竜宮城で楽しい時間を過ごしたが、親の死すら知らなかった。そんな太郎の親を思う気持ちが浦島地蔵に乗り移り、両親の墓から離れることを拒んだのではないだろうか。
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 2023年10月10日