江の島の植物・ハマナス
2023年11月20日 (坪倉兌雄)
ハマナス(浜梨)Rosa rugosaは、バラ科バラ属の落葉低木で、海岸の砂地によく生え、北海道から太平洋側の茨木県まで、日本海側では島根県に至る海岸などに生育し、地下茎をのばしながら叢生して、高さは1~1.5㍍になり、大群落をつくることもあります。江の島では北緑地~センタープロムナード、などで見ることができますが、定期的に行われる島内の清掃のなかで、しばしば雑木として刈り取られることから、ハマナスにとっての生育環境は厳しく、樹高も40~50㌢の低木で見られます。枝には短い軟毛と、細長い軟毛や刺があります。葉は互生し、奇数羽状複葉で長さは8~10㌢、3~4対の小葉があります。小葉の長さは2~3㌢、幅1~2㌢の楕円形~卵状楕円形で縁には鈍い鋸歯があり、先端は丸くて、基部は広いくさび形。葉脈は表面でくぼみ、裏面に突出して、しわが目立ち、葉全体に毛が密生します。
托葉は膜質で大きく、複葉の柄の基部に合着して先は尖ります。花期は6~8月、枝先に直径5~8㌢の芳香のある、大きな花を1~3個つけます。花弁は5個で離生し、花は紅色または紅紫色で、雄しべは多数あり、雌しべは多数で離生します。萼筒に刺はなくほぼ球形、萼片は卵状被針形で5個あります。果実はバラ状果(多肉化した萼頭で、中に多数の痩果がある)で、直径2~3㌢の扁球形、8~9月に赤く熟します。果実は食用になり、ジャムや果実酒に用い、ビタミCを豊富に含むことから美容と健康に、ポリフェノールなどを豊富含むので動脈硬化の予防などにも効果があるとされています。花は香水の原料に、根は染料などに用いられます。品種にはシロバナハマナスや、八重咲のヤエシロバナハマナスなどもあり、庭木や鉢植え、花材などにも用います。名前の由来は、果実が甘酸っぱいことから浜辺の梨(浜梨)となり、それが訛ってハマナスになった、などの説があります。ハマナスは石川啄木の詩にあり、森繁久彌の知床旅情でも歌われています。
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