江の島の植物・イシミカワ
2024年06月10日 (坪倉兌雄)
イシミカワ(石実皮)Persicaria perfoliataはタデ科イヌタデ属の、つる性1年草で、日本全土に分布し、各地の川原や道ばたで見ることができます。江の島では西側海辺や参道わき、龍野ヶ丘広場などで見ることができます。茎は分枝しながらつる状にのびて、他ものに絡みつき、長さ1~3㍍になり、茎には下向きの鋭い刺があります。托葉鞘は葉状で、円く平開して茎を抱きます。葉は単葉で互生し、薄緑色の三角形で先端は鈍頭、長さは2~6㌢、幅3~8㌢、裏面の脈上に刺毛があります。葉柄は葉身の下部に楯状につき、下向きの刺があります。花期は7~10月、枝先に、丸い皿状の苞の上に盛り合わせたような、緑色の小さな花序を数個つけます。花は淡い緑色で小さく、花冠はなく、約3㍉の萼片が5深裂します。
花後に萼片は大きく膨らみ、丸い果実(痩果)を包みます。萼片の色は成熟過程により、淡紅色、青紫、青色へと変化していき、果実が熟すと萼片の色は青色になります。萼片の中の果実は約3㍉の球形で、光沢のある黒紫色に熟します。名前の由来は定かではなく、大阪の石見川付近で採取した本草の薬効がすぐれていたとし、地名の石見川をとってイシミカワになったとする説があり、また果実が石のようにかたいことからイシミカワ(石実皮)になった、などの説もあります。生薬名をコウバンキ(紅板帰)と呼び、全草を乾燥させたものが解熱・下痢止め・利尿・腫ものなどに効果があるとされています。江の島の海辺などで見られるイヌタデ属の仲間には、ママコノシリヌグイ、ミゾソバ、ツルソバ、オオイヌタデ、イヌタデ、ミズヒキなどがあり、なかでもママコノシリヌグイとミゾソバには茎や葉柄などに下向きの刺があります。
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