江の島の植物・ナツグミ
2024年06月30日 (坪倉兌雄)
ナツグミ(夏茱萸)Elaeagnus multifloraは北海道南部、本州(太平洋側)に分布する落葉小高木で、江の島では北緑地や広場の片隅で見ることができます。高さは2~4㍍なり、樹皮は暗褐色で枝は赤褐色、若い枝には棘があります。葉は互生して、長さは3~10㌢、幅2~5㌢の長楕円形または倒卵形で先端は尖ります。葉柄の長さは5~8㍉で褐色の鱗状毛があります。葉の表面には灰白色の鱗状毛があり、裏面には銀色の鱗状毛が密生します。4~5月、葉腋に花が1~3個垂れ下がりますが、花弁ではなく、萼が変形したものです。花柄の長さは約8㍉、萼筒は円筒形で長さは7~8㍉、子房の上部はややくびれ、萼裂片は4個で広卵形になり、全体に銀色の鱗状毛が密生します。果実は偽果で、長さ1.5~1.7㌢の広楕円形、5~6月に赤く熟すと食べられます。
ナツグミの名は夏に熟すグミで、ナツグミ(夏茱萸)となり、グミの語源は木実(クミ)からグミ(茱萸)へと転じたもの、などの説があります。江の島で見られるグミの仲間に落葉低木のアキグミ(秋茱萸)があり、花期はナツグミとほぼ同じ4~5月、果実は直径6~8㍉と小さく、秋に(10~11月)に赤く熟します。枝がつる状のびた常緑低木のマルバグミ(丸葉茱萸)が、広場の片隅や海辺の藪の中など、島内のいたるところで見ることができます。花期は10~11月、葉腋に黄白色の花を開きます。果実は長さ1.5~2㌢の楕円形で、翌年の3~4月に赤く熟します。また島内には植栽されたナワシログミ(苗代茱萸)もあり、常緑低木で花期は10~11月、果実は翌年の5月頃(田植時期)に赤く熟し食用になります。ナワシログミやマルバグミの果実にはやや渋みがあります。グミの実は植物繊維が豊富で、薬効成分を含み、民間薬や生薬として用いられています。
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