江の島の植物・イヌマキ
2024年08月10日 (坪倉兌雄)
イヌマキ(犬槙)Podocarpus macrop-hyllushはマキ科マキ属の常緑高木で、雌雄異株。わが国では関東地方南部以西、四国、九州、沖縄の暖地の山地に自生します。江の島では亀ヶ岡広場の一角などに、植栽されたイヌマキの高木(雄株)を見ることができます。樹皮は灰褐色で縦に浅く裂けます。春先に伸びた新芽(しんが)は淡い黄緑色を呈して目立ちます。葉は広線形で密に互生し、やや革質で中肋があり、長さ10~15㌢、幅0.5~1㌢、表面は深緑色、裏面は淡緑色で主脈が目立ち、縁は全円で葉先は鈍く尖り、基部は葉柄に流れます。花期は5~6月、イヌマキは雌雄異株で、雄花は葉腋に数個束生して長さ約3㌢の円柱形、多数の雄しべで淡黄色になります。一方、イヌマキの雌株につく雌花は、葉腋に1個ずつつきます。
9~10月、果実は球形で白粉をかぶった緑色に熟しますが、有毒成分「イヌマキラクトン」を含むことから食用にはなりません。誤って食べると嘔吐や下痢をおこすとされています。果実の基部を支える花托(花床)は肥厚し、赤色から紫色に熟すと甘味のある偽果となり食べられます。名前の由来は、かつてマキと呼ばれていたスギやコウヤマキなどに比較して、材や見た目が劣るとし、イヌを冠して「イヌマキ」になった、などの説があります。イヌマキは潮風や大気汚染に強く、防風林や生垣などに用いられ、庭木、建築材や土木材、器具材などにも用いられています。
イヌマキの仲間にラカンマキ(羅漢槙)があり、イヌマキの変種とされ、高さは5~6㍍、葉身は長さ3~5.5㌢、幅0.3~0.6㌢と小形で、表面は濃緑色で裏面はやや白っぽく見え、幹はまっすぐに伸びて枝を水平に伸ばします。庭木では玉散らし仕立てなどによく用いられています。
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