江の島の植物・キンモクセイ
2024年10月30日 (坪倉兌雄)
キンモクセイ(金木犀)Osmanthus fragrance var. aurantiacusは、モクセイ科モクセイ属の常緑小高木、ギンモクセイ(Osmanthus fragrans)の変種で、雌雄異株、原産地は中国とされています。明確な記録はありませんが、我が国へは江戸時代(十七世紀ごろ)に、花つきのよい雄株だけが渡来したとされ、個体を増やすには、挿し木やとり木なので行われています。庭木や公園樹としてよく植えられており、江の島では神社境内などで雄株のキンモクセイを見ることができます。樹高は3~4㍍になり、よく分枝して樹皮は淡い灰褐色、薄い縦筋と皮目が見られます。葉は対生し、革質で密につき、広披針形~長楕円形、長さ6~12㌢、基部はくさび形で先は尖ります。葉はほぼ全縁~または先端部に細かい鋸歯があり、葉脈は裏面に突出します。
花期は9~10月、葉のわきから伸びた総状花序に、橙黄色の小さな花を多数束生します。花冠は小さく鐘形で、その先端は4深裂し、強い芳香を放ちます。花冠の直径は約5㍉で、雄しべが2個あります。雄株に不完全な雌しべが1個見られますが、子房は退化しているので結実しません。雄株は花付きがよく、早朝には甘い香りを放ちます。萼は緑色で浅く4裂します。名前の由来は、金色の花を咲かせるモクセイで「キンモクセイ」に、モクセイは中国名の「木犀」を音読みしたもので、木肌(樹皮)が動物の犀(さい)に似ることによるとされています。キンモクセイの花には薬効成分があり、落ちてくる花を拾い集めて陰干しにしたものを、生薬では「金木犀」とよび、健胃・低血圧症・不眠症などに効果があるとされています。同じ中国原産でモクセイ属の小高木に、銀白色の花を開くギンモクセイがあります。芳香はキンモクセイのように強くはありませんが、葉はキンモクセイよりもやや大きくて厚みがあります。いずれも庭木や公園樹などに用いられています。
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