江の島の植物・イヌガラシ
2024年12月10日 (坪倉兌雄)
イヌガラシ(犬辛子)Rorippa indicaはアブラナ科イヌガラシ属の越年草で、北海道から沖縄にいたる日本各地の道ばたや野原に生え、江の島では参道わきや空き地、岩場などのやや湿った場所で見ることができます。茎は直立して枝を分け、高さは10~50㌢になります。根生葉は長楕円形で羽状に深裂し、開花時にはほぼ枯れてしまします。葉は互生し、長楕円状披針形で基部は細くて先端はやや尖り、長さは2~15㌢、幅は1~5㌢、上部の葉はやや茎を抱きます。葉の大きさは大小さまざまで、縁に鋸歯の無いもの浅裂するものなどがあり、下部につく葉は変化に富んでいます。花期は4~11月、枝先に総状花序をだして花は下から咲き上がり、黄色の小さな4弁花をつけます。萼片は4個で長さは2.5~3.5㍉の長楕円形。
花弁は直径4~5㍉の狭卵形で、雄しべ6個、雌しべは1個あります。果実の長さは1~2㌢で線形の長角果で、弓状に曲がり上向きにつきます。種子の長さは約0.6㍉の卵形~楕円形で褐色。名前の由来は、花や果実が「カラシナ」に似るが、辛味がなく役に立たないことから犬を冠して「イヌガラシ(犬辛子)」になったとされています。カラシナ(芥子菜)は同じアブラナ属植物で、葉菜として古くに渡来し、葉には辛味があり塩漬けに、種子は粉末にして辛子に用いられてきました。
同じイヌガラシ属の越年草に、水田や湿地などによく生えるスカシタゴボウ(透田牛蒡)があり、草姿がイヌガラシに似ており、花期もほぼ同じです。イヌガラシに比べて葉の切れ込みが深く、角果は円柱状楕円形、これらが見分け方のポイントになりますが、江の島でのスカシタゴボウの生育は確認していません。 【写真&文:坪倉 兌雄】
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 2024年12月10日