藤澤浮世絵館展示 藤沢と江戸の出版事情
~蔦屋重三郎と絵師たち~
2025年1月16日(取材・記事:Tanbakko)
藤澤浮世絵館で、「藤沢と江戸の出版事情~蔦屋重三郎と絵師たち~」が開催されています。今年のNHK大河ドラマ「べらぼう」の主人公である蔦屋重三郎をとりあげた企画展で、2月24日(月・休)までの開催です。
18世紀後半に江戸の版元として活躍した蔦屋重三郎は、藤沢とは直接の関りはありません。本展では蔦屋重三郎が版元として関わりのある絵師や戯作者たちの作品を展示しています。また、藤沢ゆかりの江の島や小栗判官などの題材が江戸の出版文化に波及したことも紹介しています。それでは各コーナーの展示内容を紹介します。
◆東海道五十三次コーナー「江戸時代のベストセラー」
東海道五十三次コーナーは、江戸時代に高い評価を得た地誌「東都名所図会(江戸名所図会」と「東海道名所図会」、そして十辺舎一九の「東海道中膝栗毛」の版本が展示されています。
今回が初の展示となる「東都名所図会」は、徳川家康の江戸入府以前からの名主である斎藤家の三世代(祖父・父・子)が引き継ぎながら編纂し発行した20巻からなる地誌です。地名の由来や寺社、旧跡、故事などが記されています。
◆藤沢宿コーナー「藤沢にまつわる版本たち」
藤澤宿コーナーは、江戸時代に楽しまれた「藤沢」をキーワードに制作された版本や浮世絵が展示されています。小川泰堂 著・長谷川雪堤 画の「日蓮大士真実伝」、歌川国芳「高祖御一代略図 相州竜之口御難」、小枝繁 作・葛飾北斎 画の「小栗外伝」、作者不詳「中将姫一代記」など17点の作品が展示されています。
◆江の島コーナー「七福神浮世絵」
江の島コーナーでは、お札、版本、双六、見立絵など、様々な出版形態や描かれ方で登場する七福神の作品が紹介されています。
◆企画コーナー「蔦屋重三郎と絵師たち」
企画コーナーでは、蔦屋重三郎の人物像を紹介するとともに、蔦屋重三郎に関連する絵師や戯作者たちの作品が紹介されています。絵師としては、喜多川歌麿、北尾重政、葛飾北斎など、戯作者としては、曲亭馬琴、山東京伝、十辺舎一九、式亭三馬などが、それぞれの作品とともに展示されています。
中でも喜多川歌麿がその雅号を使い始めた直後に挿絵を描いた版本「古湊道中記」(蔦屋版)は、近年展示された記録のない希少な資料とのことです。
おまけコーナーの「写楽の謎ってなんだろう」という展示も目を引きました。写楽と言えば蔦屋重三郎の名前がすぐ浮かびますが、写楽は実に謎の多い絵師です。その謎に迫る展示です。
今回の展示は、NHK大河ドラマ「べらぼう」の放送開始に合わせて開催され、時宜を得たものと言えると思います。江戸時代のメディア王・蔦屋重三郎と関連する絵師や戯作者たちが紹介されていて、しかも初めて展示される作品が多いのが特徴です。実に見ごたえのある展示だと思いました。
◆関連展示「番場コレクション展 未来へつなげる浮世絵と郷土愛」が開催されます
藤沢市議会、神奈川県議会の議員を歴任された故番場定孝氏が収集された藤沢宿や江の島を描いた浮世絵の優品を展示します。
・会場 藤沢市民ギャラリー常設展示室
(ODAKYU湘南GATE6階 南市民図書館フロア内)
・会期 2025年1月21日(火)~3月9日(日)
※閉館日 2025年2月10日(月)
・開館時間 平日 午前10時~午後8時
土日祝 午前10時~午後6時
・観覧は無料です
◆学芸員によるみどころ解説が2月1日(土)に行われます。
・開催日:2月1日(土)
・時 間:11:00~/15:00~(各回同一内容・30分程度)
・場 所:藤澤浮世絵館 多目的室
・定 員:各回30人(当日先着順)
・参加費:無料
なお、藤澤浮世絵館の公式ホームページでは、展示作品の解説が展示期間中掲載されていますのでご覧いただければと思います。
藤澤浮世絵館公式ホームページ⇒こちら
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 ☑ 2025年1月13日