続・湘南のお地蔵さま(105)『嘉六地蔵』
2025年9月8日 (江ノ電沿線新聞)

続・湘南のお地蔵さま(105)『嘉六地蔵』
横浜市 新吉田東
(取材:中島淳一)
綱島駅からバスに乗り吉田口で下車。近くの峰大橋を渡るとすぐに嘉六地蔵堂と出会う。舟形の光背を伴い、右手に錫杖、左手に宝珠を持ち蓮華座に乗る。台石には三猿を刻み、江戸時代の一六八三年に造立された庚申供養塔である。
庚申供養塔とは甲乙丙などの十干(じっかん)と十二支を組み合わせた干支(えと)の中で、六十日に一度訪れる庚申(かのえさる)の日の夜に地域の人々が集まり、一晩中庚申様に祈り情報交換する民間信仰を三年十八回続けた記念に建立した。
その塔身に年記などの文字等と共に刻まれるのは青面金剛(しょうめんこんごう)という恐ろしい姿の像が多く、この堂内にも一八一八年造立の六本の手を持つ青面金剛を主尊とする庚申供養塔が祀られる。
お堂のあるこの地域には、鏡や勾玉が出土した四~五世紀頃の古墳が見つかっており、また百目鬼(どうみき)という妖怪が住んでいたという昔話も伝わり、とても個性豊かな町である。
この地を約三百四十年も守り続けてきた嘉六地蔵、名前の由来には辿り着けなかったが、地域の人々の団結力を後世に伝えるべく建立された庚申供養塔に、慈悲深い地蔵尊を刻んだ先人たちのやさしさが、現代に生きる私たちの心にそっと寄り添う。












