続・湘南のお地蔵さま(108)『舟乗り地蔵』
2025年12月8日 (江ノ電沿線新聞)

続・湘南のお地蔵さま(108)『舟乗り地蔵』
横浜市 本牧
(取材:中島淳一)
JR根岸駅からバスに乗り東福院前で下車。すぐ先の道を左折し、突当りの近くに真言宗東福院がある。大日如来を本尊とし江戸初期に創建されたと伝わるが、その境内に舟乗り地蔵が祀られる。いわゆる六地蔵だが、珍しいのは六体とも舟に乗ることである。以前は近くの阿弥陀堂境内に祀られていたが、戦後に現在の場所に遷座された。
舟地蔵は江戸中期より民衆に広まった岩船地蔵信仰に由来すると考えられ、舟や水に関連した願いを叶えると伝わる。この舟乗り地蔵は、昔この地が漁村だった頃六人の漁師(家族とも伝わる)が漁に出て遭難し、その供養のため建立されたという。六体とも様々な持物や手の形を表わし、衣文の彫りも丁寧で、わずかに微笑む穏やかなお顔も印象的である。
この大変珍しい地蔵尊について調べるうち、幕末から明治初期の古写真を所蔵する長崎大学附属図書館にこの地蔵尊の写真があることがわかった。その説明文では撮影地は鎌倉となってはいるが、本牧周辺は明治初め頃外国人居留地だったのでその当時写された写真ではないか。
舟地蔵は水難鎮護の役目と共に、極楽浄土へ亡者を運ぶ役目も持つという。六艘の舟地蔵が慈悲の海原を極楽浄土へ進む姿は荘厳なものだったろう。












