藤沢市の劇団「遊行舎」(脚本家・白石征さん主宰)が9月7日から三日間、遊行寺本堂で、遊行かぶき「きつね葛の葉 安倍晴明誕生秘話」を上演した。
遊行寺で上演された遊行かぶき「きつね葛の葉」 | |
藤沢市の劇団「遊行舎」(脚本家・白石征さん主宰)が9月7日から三日間、遊行寺本堂で、遊行かぶき「きつね葛の葉 安倍晴明誕生秘話」を上演した。遊行舎は伝統文化の再発掘を目的に1996年から、語り芸のルーツといわれる説経節を、現代的な解釈の中でよみがえらせた遊行かぶきの公演を続けてきている。 | |
「きつね葛の葉」出演者一同 | |
■今回の題材は五大説経節の一つの「信太妻(しのだづま)」。遊行かぶきとしての上演は今回が初めてである。 ■美しい女性に姿を変え、きつね狩りのとき救ってくれた男の妻になったキツネが赤ちゃんを産むが、ある日思いがけず素性が露見し、断腸の思いで子を残し古巣の森へ帰っていく。成長した子(陰陽師:阿倍清明)は母を捜し、母は、窮地に陥った子を助け出すために現れるという「永遠の母恋い物語」。寺山修司の歌「恋しくば 尋(たず)ね来てみよ 森こえて 母は尾のある 狐なりしを」がシナリオに詠みこまれている。 | |
「きつね葛の葉」のポスター | |
遊行かぶきのホームグラウンド;遊行寺本堂。 | 毎年、大勢の来場者があり、感動を与えている。 |
(舞台)陰陽師として活躍する安部清明 | (舞台)母親を探す安部部清明 |
(舞台)子との別れを悲しむきつね葛の葉 | (舞台)信太の森へかえってゆくきつね。 本堂の入口を効果的に演出した舞台。 |
切々と歌い上げる政太夫氏の説教節 | 本堂の畳に座って観劇 |
<最終日に行われたシンポジウム> 日大芸術学部の北川登園氏、演出を担当された白石氏、説教節の政太夫氏、遊行舎の新戸氏によるパネル討論。 ■「きつね」など動物が登場する物語には、中世の頃、人として認められぬ差別された人々の思いがある。 | |
「きつね葛の葉」は、中世の動乱期に離散した家族が苦難の末に再会するストーリー。昨年来の東日本大震災で離ればなれになった家族への思いを重ね、今回演目としてとりあげられた。来年以降も、藤沢のユニークな地方発信の演劇として「遊行かぶき」が継続され定着してゆくことが期待される。 | |