風光明媚な景観や新鮮な魚介類で知られる江の島は日本でも屈指の観光地です。江の島は江戸時代までは、神仏習合の「弁財天」を祀る島でした。江戸時代中期以降、江戸庶民に「江島詣」が人気となりました。江の島の繁栄を支えた弁財天信仰の変遷を、その由来を伝えた「江嶋縁起」や様々な資料、浮世絵などをもとに紹介しています。
人気シリーズだった「ビブリア古書堂の事件手帖」の作者の作品。江の島に100年続いた写真館を舞台として館主の死後、孫娘の藤沢に住むOLの繭が受け取りに来ない写真を注文者を渡そうと探し始める。年代が大きく離れているのに同一人物が写っているミステリアスな4枚の写真に出会う。写真の入った紙袋に、共に写真家をめざした大学の先輩の名前を見つける。限定公開のSNSに投稿した写真を一般にリークされ、幼馴染と写真家への夢を奪った犯人を突き止めたくなり先輩と会う。両方のケースに夫々意外な結論が待っている。青春時代の挫折と失意から立ち直っていく人達の懐かしさを感ずる物語である。
文芸評論家 ゆり はじめ 氏 が、江ノ電沿線新聞に発表した文章と対談をまとめたエッセイ集。「湘南」を、抽象化された「しょうなん」なるものが空気のように存在している地帯のことを漠然と指すものとしてとらえ、その「しょうなん」なるものが生み出した作家と作品を紹介している。戦争体験に真摯に向き合い、歴史の証言としての豊かな「しょうなん」の戦後文学の役割をわかりやすく解説している。
江ノ電沿線新聞に2,000年から4年にわたって連載された「湘南のお地蔵さま」を単行本化したもの。藤沢市・鎌倉市のお地蔵さまが中心だが、茅ヶ崎市・葉山町・逗子市・寒川町・横浜市・平塚市・箱根町のお地蔵さまも取りあげられている。交通手段が記載されているのでお地蔵さま巡りにも便利な書である。著者の中島氏は、現在(2017年)、江ノ電沿線新聞に「続・湘南のお地蔵さま」を連載中
江ノ電沿線新聞に24回にわたって連載された「沿線夢想」が原型。鎌倉をこよなく愛した著者 金子 晋(かねこ すすむ)が、鎌倉にゆかりのある文人たちのいきいきとしたエピソードを1話完結方式で50話まとめている。急速に変貌する鎌倉。このままでは、鎌倉にゆかりのある文人たちの足跡があとかたもなく地中に埋もれてしまうのではないか。そのような危機感がこの本を生み出したのではないかと、序文で中野孝次は記している。
江ノ島で百年間、「半分亭」という旅館を営んできた佐宗家。地元で愛され、多くの客を迎え入れてきた旅館だが、「半分亭」の隠れた仕事が「ねこもり」。島の猫たちにえさをやり生かしてやるという、とくべつ大したこともない仕事だったが、その家の女たちは皆、猫たちに守られるようにしてそれぞれの時代を生き抜いていく。1915年のすみゑの時代から、2016年の麻布(まゆ)の時代まで、四代にわたる女たちの物語を、軽やかに明るく描いた物語。この百年が、この家だけの百年ではないことを、読者に語りかける感動作。
「教育の道と芸術の道は両立できるはずだ」と恩師に言われたままに、小学校教師と現代美術作家の2足の草鞋をはき続け、退職後の闘病も乗り越え一途に活動してきた、85歳の女性現代美術作家・熊沢淑。戦争を挟んだ波瀾万丈の85年間の軌跡を織り交ぜながら、初期の鉛筆による繊細な抽象絵画からキャンバス地にミシンによる縫い目で自在に描く最新作までを紹介。